発地型観光と取材

ゲストハウスを開業する前、私は遊園地でのアルバイトから始まり、プールサイドの監視員、水族館で団体客の誘導や案内、現地ツアーガイド、観光を主としたフリーペーパーの編集、そして旅館業に携わっていた。どれも“観光”の一環として人が集まる場所、また人が手にするものを作っていた。

「どうしてゲストハウスを」

とよく聞かれるが、自分でもわからない。
ただその時に漠然と

「情報が行き交う場所を持ちたかった」

そんな記憶はある。
はたしてどんな情報か、と言われるとそこもぼんやりするのだけれども、
まぁ、そういうイメージは持っていた。

そして開業から4年弱が立ち、今やりたいこと、というよりも、「いつからか愕然とやりたかったこと」を列挙してみるならば

- 情報の往来に関わること
- 私製の観光案内所
- 文字にすること
- 小さなイベントを拾い、発信すること
- すでに在るものの価値をわかりやすくし、発信すること
- 収益制が見えなくとも自分が呼びたい人ややりたいことを小さく行うこと
- 2011年10月に開催した「行こうよ札幌」のように他地域を訪ねるイベント
- 同じく他地域に住む知人に長野に来てもらうための趣味思考に合ったパッケージツアー
- ワークショップ(これもまたぼんやりだけれども)

こういうことを考えている時に、“観光”に立ち返り、とくに“着地型観光”についてより知識を増やしてみよう、と思った。

着地型観光の入門書のようなものを読み進めるうちに、漠然とながら自分の興味がここに集約しているようにも思えた。
自分としても今の観光は観光業に携わる人間だけが関わるものではないと理解していたが、やはり着地型観光ともなればいわゆる旅行業者の手だけではどうにもならないものであり、そこには我々のような宿泊業や飲食業、そして地域住民の積極的な関わりが必要不可欠である。

そしてそこには自分が漠然とながらに「やりたい」と思っていたことが少なからず関わっているのにも気づいた。

少し話しはそれるが、私は「取材」を受けるのが嫌いである。その理由としては予め探している絵を取らせてくれるところを探しているだけで、私自身がどういう思いを持っていようと、それは全く彼らには関係ないということが気持ち悪い。
そんななか、そもそも「取材は“材”を“取り”に行くこと。」と聞き、その言葉を聞いて、妙になっとくした。
こちらの勘違いというのか、そもそも「あなた自身がどういう思いを持っていようと、それは私たちには関係ないです」という前提のもとで取材依頼が来ているわけで、私も受けるのであればそれを理解したと見なされるのかもしれない。

ちょっと話がずれたようだけれども、「発地型観光」(すなわち都市部などにある大型の旅行会社が企画したパッケージツアーなど)とこの「取材」というのはどこか親しい気がした。

着地(旅行者を受けいれるその地域)が何を大切にしているか、日々どういう暮らしをしているか、そういうことは発地側にある旅行会社はたいして興味を持たず、彼らにとって必要なのは観光客にどれだけアピールできるかである。「体験を混ぜた方が良さそうだから、そういう施設を探す」というような。それは取材先の人や店、地域が何を大切にしているか、日々どういう暮らしをしているか、そういうことは取材元はたいして興味を持たず、視聴者にどれだけアピールできるかを考える、それに似ているような気がする。
(もちろん、きちんと話を聞いてくれるメディアの方にも出会っているのだけれども、そういう方がたとのお話はそもそも“材”を“取り”に来た感じではないので、ここの話からちょっと外したい)

視聴者がどれだけ変化しているかはわからないが、少なくとも観光客の意識はこの数年で変わってきていると思う。発地の大型旅行業者がマスに向けて作ったパッケージツアーでは満足いかない人たちは、よりローカルなまた自分自身の興味に合致した情報を求めている。インターネットの普及や交通網の充実はそれを後押ししている。1166バックパッカーズをやっていても「観光客向けじゃないお蕎麦屋さんは?」「地元の人が集まる居酒屋は?」「残念だけど、あそこはツーリスティックだったね…」なんて言葉が行き交うことも多い。そういう意味ではやはり旅行業者だけでなく、いっけん観光に携わっていないように見える地域住民の積極的な関わりが必要になってくる。

って何だか、観光について書いてみた、ちょっと蒸し暑い夕方です。
最近、こういうそれっぽく頭使っているように見せかけることばかり書いているので、アレですが、梅雨ですからね。
一年で一番静かになる6月中旬ですから、こういうときに頭の整理をするわけなんです.

明日、11日(水)は門前留学やってます。


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2014年06月10日 Posted by1166 バックパッカーズ at 16:00 │Comments(3)日々の営み

この記事へのコメント
先日はお世話になりました。雨に降られてびしょ濡れのところ、あれこれとご配慮頂いたこと、本当に嬉しかったです。

興味深く記事を読みながら、色々と頭を巡っていたので僕自身の頭の整理もかねてお話できればと思いPCに向かっております。(少々長くなる予感・・・お時間あればで構いません)

着地型観光は、実感としても、TVや雑誌のメディアとしても、最近特に触れる機会が多くなったように感じます。少し前だと、「パンフレットの写真を確認しに行く」とも揶揄されたパッケージツアーとは随分変わった気がします。「写真と違うじゃないか!!」というクレームもあったような。

その土地のより素の部分への欲求が強くなっていることは、より内面的で、その土地の人との関わりが多くなる点で喜ぶべきとも思います。(その土地の醜い部分まで受け容れる包容力を観光客に求めるのは難しいかもしれませんが)

一方で、最近少し違和感を感じることも増えました。それは、その土地の人と関わったことを得意げに語る場面です。話を聞いていて感じたのは、その土地の人と関わることが玄人っぽい(?)という意識です。漠然とですが、「観光<旅行<旅」というような、玄人っぽさを求めているように感じます(伝わりにくくてすみません)。意識がその土地に向いていなければ、旅行本来の醍醐味もありませんし、何よりその土地の人に失礼であり、望む姿ではないと思った次第です。

僕自身、1166BPを通して長野を好きになった身なので、1166BPは旅行者と地元の橋渡しになっていると感じておりますが、着地型「風」パッケージツアーが急速に増えている気がしてなりません。

日付も変わってしまいましたし、長々と失礼いたしました。こちら深夜でも蒸し暑い日々です。また宿泊できる日を楽しみにしております。
Posted by Yuki WATANABE at 2014年06月26日 00:14
『その土地の人と関わることが玄人っぽい(?)という意識』
わかりますねー(笑)
それがマイナスだ、とはあまり思っていませんが、おっしゃりたいこととてもよくわかります。

「マイナスだ、とはあまり思っていない」、というのは、それはそれでお互い楽しんでいるというのを目の当たりにすることも多いからかもしれません。

よくラウンジで、旅人たちが、「◯◯ゲストハウスには地元の人が集まるから、行った方がいい!」とか、「●●居酒屋で地元のおじちゃんと飲んだ!」と楽しそうに話してます。それは決して土地の人にとって失礼ではないし、得意げに語られた土地の人は、そもそも得意げに観光案内してたりもするので、なんだかウィンウィンのようにも見えるんですよね〜。

前述のとおり、
『その土地の人と関わることが玄人っぽい(?)という意識』の方が増えたという実感はすごーくあります!!
Posted by 1166 バックパッカーズ1166 バックパッカーズ at 2014年07月01日 23:45
わぉ!飯室さん!
このブログ、いま読みましたー(最近、全然ブログ読めてないです)。

今度、「観光の会」しましょーよー。

ってふざけたコメントでごめんなさい。
でも、しませんか?!
Posted by いしかわみすみ at 2014年07月08日 19:30
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